私の作品は全てフィルムカメラで撮影されたものです。ただその見た目はデジタル加工がされたように見えます。しかしこれらは「多重露光」や「クロスプロセス現像」といったアナログな技法によっての結果なのです。このページではそれぞれの方法についてご案内します。

フィルムの現像方法「クロスプロセス現像」について
クロスプロセス現像とは一般的にポジフィルムをネガフィルム用の現像液で処理する現像テクニックです。この現像方法によりコントラストが強くなったり、実際の色とは異なる発色が可能になります。
少し具体的に説明します。ポジフィルムは通常「E-6」というポジフィルム用現像液で処理されます。しかしクロスプロセス現像は「C-41」というネガフィルム用現像液で処理します。ポジフィルムをネガ現像する、つまり現像方法を”クロス”させるのです。
ポジフィルムはスライドや高質な印刷物などの用途にも利用されるため、非常に発色の強くコントラストがはっきりとした描写が現れる傾向があります。このような特徴からクロスプロセス現像を行うことで、より鮮やかな発色とコントラストが際立つ効果が生まれるのです。
またフィルムのメーカーや種類、撮影時の天候、時間によっても結果は大きく変わってきます。あくまでも予測できない化学反応の結果のために必ずしも期待通りに発色されるとは限りません。そんなリスクのある現像方法ですが、それもアナログの楽しさでもあります。​​​​​​​
撮影技法「多重露光」について
多重露光とは簡単に説明すると一つのコマに写真を重ねて撮影すること。通常はシャッターを切るごとにフィルムを巻き上げていきますが、多重露光は一度シャッターを切ったコマを巻き上げずに続けてそのまま撮影を続けて被写体を重ねていくことです。このような撮影ができるカメラは限られているために、全てのフィルムカメラでできるわけではありません。右上、右下の写真はレンズアクセサリー「Splitzer(スプリッツァー)」を使ってレンズをマスキングし露光制御しながら撮影をしています(詳細は後述します)。
実は多重露光の機能のないカメラでも多重露光は可能です。それは撮影を終えたフィルムを巻き戻し、カメラから取り出した後、現像をしないで再度そのフィルムをカメラに装着して再び1枚目から撮影をし直すという方法です(後述するセルフフィルムスワップ)。これにより1回目に撮影した被写体の上に、2回目に撮影した被写体を重ねることができるのです。これも多重露光の技法の一つです。
多重露光の撮影方法「セルフフィルムスワップ」について
多重露光の方法のひとつに「フィルムスワップ」があります。これはAという人がフィルム1本撮影を終えた後に、そのフィルムを巻き戻しカメラから取り出します。次にそのフィルムをBという人に渡してBがそのフィルムをカメラに再装着してAが撮影したコマの上に重ねて撮影する方法です。例えばAが大阪で撮影したフィルムをBが東京で撮影すると、大阪と東京が重なった写真に仕上がるというものです。これをひとりで行うのが「セルフフィルムスワップ」です。下の写真は私が海外のフィルム仲間と行ったフィルムスワップです。
日本と香港
日本と香港
日本とイギリス
日本とイギリス
日本と台湾
日本と台湾
日本と香港
日本と香港
もう一度おさらい
さて、私の作品には例えば上半分と下半分または右半分と左半分が全く違う国で撮影されているものがあります。これはセルフフィルムスワップで撮影された多重露光ですが、これを撮影するために前述したレンズアクセサリーのSplitzer(スプリッツァー)を使用しています。まずはどのような作品か下の写真をご覧ください。
左半分アイスランド - 右半分香港
左半分アイスランド - 右半分香港
上半分香港 - 下半分日本
上半分香港 - 下半分日本
上半分アメリカ - 下半分日本
上半分アメリカ - 下半分日本
上半分香港 - 下半分日本
上半分香港 - 下半分日本
ではどのように撮影をしているかを説明します。まず私がメインに使用しているカメラのLOMO LC-A+というカメラにはレンズをマスキングできるアクセサリー「Splitzer(スプリッツァー)」(下写真)をオプションで付けることができます。そのSplitzerを使ってレンズの上半分と下半分または左半分と右半分を露光制御し撮影をすることができます。このSplitzerは自由にカバーの部分を動かすことができます。
LOMO LC-A+
LOMO LC-A+
Splitzer(スプリッツァー)
Splitzer(スプリッツァー)
右半分だけ撮影する場合
右半分だけ撮影する場合
下半分だけ撮影する場合
下半分だけ撮影する場合
左半分だけ撮影する場合
左半分だけ撮影する場合
1/4だけ撮影する場合
1/4だけ撮影する場合
具体的に撮影の仕方の説明をしてみたいと思います。上半分をアメリカ、下半分を日本で撮影をした作品があります。これはまずアメリカでカメラにフィルムを装着し上半分だけを撮影するために、Splizterでレンズの下半分を隠し、下半分が露光されない(撮影されない)状態にします。そしてこの状態でこのフィルムを全てアメリカで撮り終えます。この段階ではフィルムの上半分だけを撮影した状態となります。撮影後フィルムを巻き戻しカメラから取り出します。そして次に日本で撮影する時に、Splitzerでレンズの上半分を隠し下半分だけを撮影できるようにします。そしてアメリカで撮影したフィルムをカメラに再装着し、1枚目から最後まで撮り切ります。そうしてそのフィルムを現像すると最終的に上半分と下半分が一つのコマに組み合わさった作品ができるのです。
フィルムの上半分だけを撮影
フィルムの上半分だけを撮影
上半分だけ露光した状態(イメージ図)
上半分だけ露光した状態(イメージ図)
フィルムの下半分だけを日本で撮影
フィルムの下半分だけを日本で撮影
完成写真
完成写真
この撮影方法を行う場合、1回目の撮影時に「何枚目に何を撮影したか」を記録して、それを参考に2回目を撮影します。そうすることで何と重ねると面白い表現ができるかの手助けとなります。しかし、それを記録せずにランダムに撮影をすることもあります。その場合、偶然の産物が非常に面白く、かつ撮影時はあまり考え込む必要がなくなるので気軽さもあります。
LOMO LC-Wによるオーバーラッピング
隣り合うコマを半分ずつ重ねていく特殊な技法による多重露光(下の写真)。説明書には書かれていないアウトロー的な撮影です。撮影方法については私がロモグラフィーへ寄稿したこちらリンクをご覧ください。
スプリッツァーを使った四重露光
LOMO LC-A+専用のレンズアクセサリースプリッツァーを使い、一つのコマに4回露光する多重露光。撮影方法については私がロモグラフィーに寄稿したこちらリンクをご覧ください。
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